Couch(カウチ)ボストン発、7人組ソウル集団が証明するDIYの到達点

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Photo from Couch's Facebook

ボストン発のソウルバンド、Couch(カウチ)。ソウル、ファンク、ジャズ、R&Bを7人で束ね、ライブになるほど熱を帯びる彼らが、2025年にデビュー・フルアルバム『Big Talk』を引っ提げて欧州を席巻した。ソールドアウトが相次いだツアーの余韻が冷めやらぬ今こそ、日本の洋楽ファンに届けたい。

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Couchとはどんなバンドか

Couchは2018年頃、ボストン近郊に縁のある高校・大学時代の友人たちによって生まれた。とはいえ、最初のステージに立つまでに約3年間はずっと、各地に散らばりながらリモートで曲を作り、録音を重ねていたという。物理的に同じ場所にいなくても音楽が育っていく、そのプロセス自体がこのバンドの性格を形成している。

現在のメンバーは、ボーカルのTema Siegel、ギターのZach Blankstein、ドラムのJared Gozinsky、ベースのWill Griffin、キーボードのDanny Silverston、トランペット/トロンボーンのJeffrey Pinsker-Smith、サックスのEric Tarlinの7人。ジャズ、アカペラ、ミュージカルシアターと、それぞれが異なる音楽教育を経てきたメンバーが集えば必然的に音の密度は上がる。ホーン奏者を2人擁する大所帯編成は、スタジオよりもライブ・ステージで真価を発揮するための必然的な選択だったことだろう。

運営も独自の論理で動いている。完全DIY・独立レーベル、ギタリストのZachがマネジメントを兼任し、多くのメンバーがバンド外の仕事を持ちながら収益を活動へ還元。規模が大きくなっても自走し続けるための設計を、彼らは最初から意識して取り組んできた。


音楽スタイルと聴きどころ

Couchの音楽を一言で言い表すのは難しい。

骨格はポップだ。メロディは耳に残り、Temaのボーカルは感情を過不足なく乗せる。そして、そこへEarth, Wind & Fireを想起させるファンクのグルーヴ、Stevie WonderやMotown的なソウルの体温、ジャズ由来の和声の豊かさが重なっていく。

鍵を握るのは、ライブホーンが生み出す「アナログの温かさ」。打ち込みではなく、7人の人間が同じ空気を振動させているという実感が、音源を通しても伝わってくる。重なるコーラス、緻密に設計されたホーン・アレンジ、それらを包むキーボードの色彩。聴きやすさと演奏の本気度が両立するバンドは、実は世界でもさほど多くないだろう。

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ディスコグラフィー:EP『Couch』からデビューAL『Big Talk』まで

Couchの作品歴は、積み重ねの記録である。

2021年のセルフタイトルEP『Couch』が出発点だ。リモート制作の蓄積がはじめて音源として結実した作品で、明るさ、ハーモニー、グルーヴというバンドの基本語彙がEP『Couch』に揃っている。2023年の『Sunshower』では表現の幅が広がり、翌2024年にはスタジオ音源と並行してライブ・セッション集『The Sweater Sessions』をリリース。特に「Easy to Love」と「Little Less Over You」のセッション映像が大きな反響を呼び、”ライブで化けるバンド”としての評判を確固たるものにした。

転換点となったのが、2025年10月24日リリースのデビュー・フルアルバム『Big Talk』。マスタリングを手がけたのはColin Leonard——BeyoncéやJustin Bieberのサウンドを仕上げてきたエンジニアである。その起用が示すとおり、これはスケールアップを宣言した作品だ。

タイトルの意味するところは明快だ。”small talk”ではなく”big talk”、つまり避けられない大事な会話、深くつながることへの意志表明。恋愛だけにとどまらず、友情や自己受容まで含んだ「多面的な愛」がテーマになっている。リードシングル「What Were You Thinking」では、痛みや怒りを経て主体性を取り戻す姿がアンセム的な熱量で描かれ、従来のCouchよりも感情の鋭さが一段前に出た。サウンド面でも新たなシンセの質感が加わり、「So Myself」、「Static & Noise」、「Little Less Over You」といったハイライト曲が、バンドの到達点を更新している。


なぜ今Couchを聴くべきか

Couchを日本語で検索しても、まとまった情報はほとんどヒットしない。それ自体が、今このバンドに触れる理由になる。

Boston CallingとLevitate Music & Arts Festivalへの出演、Lake Street DiveやCory Wongとのツアー、St. Paul & The Broken Bones、Sammy Rae、Ripeのオープニング・アクトを務めるなど、フェスやライブ実績は本物だ。Charlie Puth、Jon Batiste、Susan Tedeschiが審査員を務めるSalt Lick Incubator Awardを受賞し、2025年末にはBoston Music Awards 5部門にノミネートされた(”Artist of the Year”含む)。2026年初頭の欧州ツアーでは、ロンドン、アムステルダム、ベルリン、パリ、コペンハーゲンでことごとくソールドアウト。彼らのインディーソウルシーンにおいての存在感は日増しに高まっている。

「What Were You Thinking」でその熱量を受け取り、「Easy to Love」で原点の軽やかさに触れ、そのまま『Big Talk』を通しで聴く。その1時間が、今年の洋楽体験のなかで最も手応えのある時間になるはずだ。

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