Jessie Ware(ジェシー・ウェア)は、ロンドン生まれのシンガー・ソングライター。その洗練されたボーカルとポップ、R&B、ソウル、エレクトロニック、そしてディスコを自在に横断する都会的なサウンドは、英国の音楽シーンで長年にわたって高い評価を受けてきた。2012年のデビュー作『Devotion』で一気に注目を集め、以降もUKチャート上位に作品を送り込み続けている。
音楽活動だけにとどまらず、母親 Lennie Wareとのポッドキャスト「Table Manners」も人気を博し、英国ポップカルチャー全体に存在感を示す——そんな稀有なアーティストだ。
転換点は2020年。ディスコという武器を手に入れた
Jessie Wareのキャリアを語るうえで、2020年リリースの『What’s Your Pleasure?』は欠かせない。
それまでの内省的なR&Bやソウル路線から一転、ディスコとダンス・ポップを全面に押し出した作品として、批評家・リスナーの双方から絶賛された。「こんなJessie Wareがいたのか」と多くのリスナーが驚いたアルバムでもある。
2023年の『That! Feels Good!』では、ディスコR&Bの魅力をより大胆に、よりグルーヴィーに展開。クラブフロアからホームリスニングまで、幅広いシーンで語られる作品となった。洗練と高揚感が同居する、Jessie Wareならではのスタイルが確立された瞬間だったといえるだろう。
そして2026年、彼女はさらに先へと進もうとしている——それが最新アルバム『Superbloom』だ。
6枚目のスタジオアルバム『Superbloom』——4月17日リリース
Jessie Wareにとって通算6作目のスタジオアルバム『Superbloom』。
本作には、James Ford、Barney Lister、Karma Kid、Jon Shave、Stuart Priceといった豪華制作陣が名を連ねている。Stuart Priceといえば、Pet Shop BoysやNew Order、Madonnaのプロデュースで知られる人物。その関与だけでも、このアルバムのサウンドの方向性がなんとなく見えてくるだろう。
アルバムのテーマは「touch, pleasure, intimacy and connection」——触れ合い、快楽、親密さ、そしてつながりへの欲求だ。前2作のディスコ/ダンス・ポップ路線を引き継ぎつつ、より多幸感のある作品世界へとさらに踏み込んでいる。影よりも光。内省よりも開放感。そのムードが、全編を通じて流れ続けている。
「Superbloom(スーパーブルーム)」という言葉は、乾燥した大地に大量の雨が降ったあと、一面に花が咲き誇る自然現象を指す。まさにそのイメージ通り——湿度を帯びたサウンドの中に、感情が一気に花開いていくような感覚が全編を貫いている。
まず聴くべき3曲
まずこの3曲を聴いてみてほしい。
I Could Get Used to This
アルバムのリード曲にして、この作品世界への”招待状”ともいえる一曲。ラッシュなディスコR&Bのサウンドに、たっぷりと効かせたストリングスが絡み合う。ロマンスと祝祭感、そして快楽性——アルバムの核心にある感情が、この曲にすべて詰まっている。
Ride
アルバムの中でも特に踊れる一曲として位置づけられている。シネマティックで遊び心があり、クラブフロアを想定したかのような構成だ。ただ、ダンスミュージックにありがちな「ただ気持ちいいだけ」で終わらない深みがある。公式ミュージックビデオも公開されており、サウンドだけでなくビジュアルも含めて楽しめる。
Automatic
先行シングル3曲のなかで、もっともモダンな質感を持つ曲。アルバムの「現在地」を確認するような役割を担っており、2026年のJessie Wareがどこを向いているかが最もクリアに伝わってくる。「I Could Get Used to This」で世界観をつかみ、「Ride」で高揚し、この「Automatic」でその勢いをさらに一段引き上げてくれる。3曲を続けて聴くだけで、アルバム全体の輪郭がつかめるだろう。
Jessie Wareをまだ聴いていないなら、今がちょうどいい
『Superbloom』は、Jessie Wareをまだ知らなかった人が最初に触れる作品としても十分な魅力を持っている。ディスコの高揚感、R&Bの深み、ポップの親しみやすさが一つのアルバムに共存していて、どれか一つでも刺さる要素があれば、あとは自然と引き込まれていく。
本作が気に入ったなら、前作『That! Feels Good!』や2020年の転換点『What’s Your Pleasure?』へと遡ってみてほしい。そこにはさらに豊かな音楽的世界が広がっている。
最新アルバム『Superbloom』が、そのきっかけになることだろう。



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