オーストラリアが生んだ新星、Budjerahとデビューアルバム『Gentleman』が描く音楽の新章

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「次に来るアーティスト」ではなく、もう来ている

オーストラリア発のシンガーソングライター、Budjerah(ブジェラ)。24歳にして既に総再生回数6,000万回以上のストリーミング再生を記録しているアーティストである。

デビューフルアルバムのリリース前に、その数字を積み上げてきた。これが何を意味するかは、説明するまでもないだろう。

本名はBudjerah Djurum Slaib。ニューサウスウェールズ州フィンガル・ヘッド出身で、誇り高きクージンブラ族の血を引く。一聴して引き込まれるボーカルで、オーストラリア国内はもとより、国際的な注目を集めてきた。

そのBudjerahが、2026年7月24日にデビューアルバム『Gentleman』をワーナー・ミュージック・オーストラリアからリリース。単なる新譜ではなく、一人のアーティストが約4年の時間をかけて作り上げた自己表現の集大成だ。

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6,000万再生の前に知っておきたいキャリアの流れ

Budjerahの名が最初に広まるきっかけとなったのは、2020年のデビュー曲「Missing You」だった。triple j airplay chartで1位を獲得し、オーストラリアの音楽シーンに鮮烈な印象を残したのである。

翌2021年には転機が訪れる。Matt Corbyとの共作「Higher」が、APRAアワードで「最も演奏されたR&B/ソウル作品」に輝いた。同年、ARIAアワードではブレイクスルー・アーティスト賞を受賞。さらに、同賞の初代受賞者となるマイケル・グディンスキー賞も手にした。

その後も歩みは止まらなかった。2022年にはARIAアワードでベスト・ソウル/R&Bリリース賞を受賞。そして2023年、エド・シーランのソールドアウトとなったスタジアム・ツアーで前座を務め、シーランの「2Step」のリミックスにも参加。世界規模での存在感を、着実に積み上げていった。

2023年のシングル「Therapy」は、オーストラリアでプラチナ認定を取得。Spotifyでの再生回数は1,900万回近くに達しており、現時点での代表曲のひとつとして確固たる地位を獲得。同年には、米国市場へ本格的に参入を視野に北米・中南米でのマネジメント契約をUnited Talent Agencyと締結した。

こうして振り返ると、Budjerahのキャリアは「急に注目されたアーティスト」ではないとわかる。じっくりと、しかし確実に実力と評価を積み重ねてきた。


アルバム『Gentleman』が生まれるまで

Budjerahは「このアルバムは、私が成長過程でなりたかった自分からインスピレーションを得たものです」と語る。

制作に要した時間は、約4年。彼は家庭での生活とツアー生活を往復しながら、多くの変化と成長を経験したという。「夢を追いかける中で直面した新たな挑戦が、自分がどうありたいかを理解する助けとなりました。このアルバムのすべての曲には、私の一部が込められています」

アルバムのプロデュースを手掛けたのは、フランク・オーシャンの作品で知られる現代R&Bシーンにおける重要人物、Om’Mas Keith。彼の手によって、Budjerahが幼少期から育んできたポップとR&Bへの愛が、一枚の作品として形を結んだ。

ワーナー・ミュージック・オーストラリアのダン・ローゼン社長は、業界関係者の前でこう語った。「オーストラリア音楽史における決定的な瞬間となるだろう」と。キャリアの軌跡を辿れば、その言葉の重みは自然と伝わってくる。


タイトル曲「Gentleman」が体現するもの

アルバムのタイトル曲「Gentleman」は、ひとたび聴けば頭から離れない。それほどまでに、フックが鮮烈だ。

作曲に携わったのは、Autumn Rowe(アレクシス・ジョーダン、カイリー・ミノーグへの楽曲提供で知られる)、Kizo Keys(ジョン・バティスト、ニーヨ)、そしてPhillip Lawrence(ブルーノ・マーズ)という豪華な顔ぶれである。楽曲に漂うノスタルジックな雰囲気は、意図的に生み出されたものだ。

「紳士であり、彼女を大切に扱うことが大切だ」とBudjerahは語る。「僕は年配の方々に囲まれて育ったから、彼らが聴いていた音楽や、互いに接する様子に影響を受けた。この曲はまさにそのことを歌っているんだ」

丁寧に人を扱うこと、誠実であること。年上の世代が大切にしてきた価値観を、R&B/ポップのフォーマットに落とし込んでいる。世代を超えて響く理由が、ここにある。


もう一つの先行曲が示す、新たな方向性

アルバム発表に先立ち公開された先行シングル「Want You Back」も、注目の一曲だ。

90年代から2000年代の音楽への愛を込めた、ノスタルジックなファンク・ポップアンセム。アップテンポで踊れる曲調の背景には、つらい時期にダンスが自分を支えてくれたという個人的な経験が宿っている。音楽が持つ力を、Budjerah自身が深く信じているからこそ生まれた曲といえるだろう。

「Gentleman」とは異なるアプローチでありながら、どちらも90年代・2000年代のR&Bやソウルが持つ温かさとグルーヴ感を、現代の文脈で再解釈している点では共通する部分がある。この二曲から、アルバム全体を貫くムードはすでに見えてくる。


全11曲が語るアルバムの輪郭

収録曲は全11曲。「Gentleman」「Want You Back」に加え、「I Only Remember Your Name」「Competition」「Could I Be」「Sinner」「Pretty」「Hard Time」「Lonely」「Let Me Know」、そしてクロージングトラック「Even At My Worst」と並ぶ。

曲名だけでも、その感情の幅が伝わってくる。孤独、競争、罪、美しさ、困難——Budjerahが4年の歳月をかけて向き合ってきたテーマが、タイトルの端々に滲んでいる。

クロージングを飾る「Even At My Worst」は、グラミー賞に最多ノミネートを誇るソングライター、Diane Warrenが手掛けた楽曲。3月に行われたアルバムお披露目のショーケースでも披露され、観客の心を掴んだという。アルバムの幕を引くに相応しい一曲である。


かつての音楽体験が、ここで蘇る

Om’Mas Keithのプロダクション、フランク・オーシャン以降のR&Bが持つ細やかな感情表現、そして90年代・2000年代サウンドへのオマージュ。このアルバムには、懐かしさを感じさせながらも、確かに今の音楽として成立している独特の質感がある。

かつてMichael JacksonやStevie Wonder、あるいは90年代のR&Bグループに夢中になった記憶を持つ人であれば、その感触はどこか既視感を伴うはずだ。しかしそれは模倣ではなく、24歳のアーティストが上の世代の音楽から誠実に学び、自分の言葉で再構築したものだ。

懐かしさと新しさが、同じ一曲の中に共存している。それがBudjerahの音楽の核心といえる。


まず聴くべき一曲を選ぶとするならば

入門としてまず「Therapy」を聴いてほしい。Spotifyで1,900万回近く再生された、現時点での代表曲だ。Budjerahのボーカルと、感情を乗せる技術がわかりやすく詰まっている。

次に「Gentleman」か「Want You Back」へ進めば、2026年の彼がどこへ向かっているかが見えてくる。それだけで、このアーティストの全体像はかなり掴めるはずだ。

デビューアルバム『Gentleman』は、2026年7月24日リリース。総再生回数6,000万回以上を積み上げてきたその歩みが、ここで一つの形を結ぶことだろう。

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