Jungle(ジャングル)という名前を知っていれば、Loaded Honey(ローデッド・ハニー)の話を聞き流すのはもったいない。だが、たとえジャングルを知らなくても、この音楽はすんなりと心に届く。それがローデッド・ハニーという存在の面白さだ。
Loaded Honeyとは何者か
Loaded Honey(ローデッド・ハニー)は、ロンドンを拠点とするプロジェクト。メンバーはLydia Kitto(リディア・キット)とJ Lloyd(J・ロイド)。二人はともに、ネオソウルとダンスミュージックを独自の感性で融合させるバンド、Jungleのメンバーとして知られている。
Jungleの『Loving in Stereo』(2021年)と『Volcano』(2023年)のレコーディングを経て、二人のクリエイティブなパートナーシップは深まっていった。同じ空間で生活しながら音楽を作るうちに、Jungleでは収まりきらないアイデアが積み重なっていく。それがLoaded Honeyの始まりだ。
Jungleがダンスフロアを沸かせる音楽だとするなら、Loaded Honeyは夜も更けた頃のスローダンス。目指したのは「日曜の朝の静けさに寄り添うような音楽」だという。その言葉通り、アナログ機材の温かな質感、フェンダーローズを思わせる鍵盤のトーン、朧げなギターと重ねた多重コーラスが、シネマティックな世界観を形作っている。
デビューアルバム『Love Made Trees』——愛はこんなにも静かだった
2025年6月6日、ファーストアルバム『Love Made Trees』がリリースされた。
本作の核心はロマンス。愛情、嫉妬、切望、内省、そして受容。恋愛のあらゆる局面を、柔らかく、歌ものとして、まるでストーリーを語るように紡いでいく。一瞬たりとも不自然さを感じさせず、メロディに過剰な計算も見当たらない。
オープニングトラック「In Your Arms」では、「I belong, in your arms」というフレーズを繰り返す。結婚式のファーストダンスでしか感じられないような古典的なロマンティシズム。まずここでアルバムの使命が確立される。
デビューシングルでもある「Don’t Speak」は嫉妬に駆られた恋人の切望を歌いながら、「Need me, you need me」という言葉でアルバムのロマンティックな基調へと回帰する。続く「Lessons」は問題を解決しようとするカップルに焦点を当て、「誰もあなたのように/私を抱きしめられない」と静かに想起させる。思わず体を揺らしたくなるアルペジオが、耳に残るフックを生んでいる。
1950〜60年代のフィリーソウルやポップソウルを思わせるアナログ質感が随所に漂い、「Over」ではLydia Kittoの低音域が珍しく登場。繰り返されるツーステップのドラムとベースの上に、高音のトリルが美しく広がる。「Tokyo Rain」はより壮大なスケール感を持ちながらも、激しい瞬間にさえ優しさを保ち続ける。
そしてアルバムのタイトルトラック「Loaded Honey」は、特別な存在感を放っている。ミニマルなアレンジ、切ないギターのストローク、流れるようなストリングス。子守唄のような哀愁を帯びたこの曲の映画的なロマンティシズムは、楽観主義ではなく、その悲しみにこそ宿っている。
音楽的な参照先としては、Mazzy Star、Broadcast、Big Thiefあたりが浮かぶ。オルタナとフォーク、ドリーミーな残響が交差する世界が好きなリスナーには、確実に刺さる一枚だ。
DJミックス『The Golden Hour』——黄金色の朝に浸る48分
アルバムリリースから約1ヶ月半後の2025年7月23日、ローデッド・ハニーはDJミックス作品『The Golden Hour (DJ Mix)』を発表した。
二人が「ソウルフルなサンデー・モーニング・ヴァイブス」と表現するこの作品は、まるで黄金色に染まる朝の光の中でコーヒーを飲みながら過ごすような、ぬくもりのある48分間。Thee Sinseers、The Soul Surfers、Jalen Ngonda、Air、The Deceptionsなど、ネオソウルシーンの良質なトラックが17曲並ぶ。自身の楽曲「Don’t Speak」も収録され、キュレーターとしてのセンスを遺憾なく発揮している。

新しい音楽を探しているあなたへ
良質な音楽を求めているなら、Loaded Honeyはいま最も注目すべき名前のひとつだ。Jungleほどのダンス色はなく、むしろ落ち着いた夜や週末の朝に似合う。それでいて、表面的な心地よさだけで終わらない深みがある。
新しいお気に入りを探しているなら、Loaded Honeyはその答えになるかもしれない。まずは一曲、聴いてみてほしい。


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