韓国には、確かな実力で評価を積み上げてきたデュオがいる。SUMIN & Slomだ。Grammy.comにも韓国大衆音楽賞にも認められた二人の音楽に、今こそ触れてほしい。
二人はどんな人物か
SUMIN(수민) の本名はパク・スミン、1991年生まれのソウル出身だ。シンガー・ソングライターとプロデューサーを兼ねる彼女のジャンルは、R&B、ヒップホップ、エレクトロニック、クラブミュージックと多岐にわたる。
ひとつのジャンルに収まらない。それがSUMINという人物の本質である。
ソロ活動と並行して、BTS・Jimin「Lie」やRed Velvet「Eyes Locked, Hands Locked」、BoA、Chungha、IUといった韓国トップアーティストへの楽曲提供も手がけてきた。その功績は業界に広く知られており、Grammy.comは2021年に「K-POPシーンを定義した5大ソングライター&プロデューサー」としてSUMINを選出している。
一方のSlom(슬롬) は、本名キム・ミンウ、1993年生まれ。カリフォルニア州パロアルト出身で、米国生まれ・韓国育ちというバックグラウンドを持つ。「Slom」という名前は「Minwoo(ミンウ)」と「Sloth(ナマケモノ)」を組み合わせた造語だ。UCLA社会学部を卒業後、在学中にビートメイクを独学でマスター。SoundCloudへのリミックス投稿がきっかけで注目を集めた。
影響を受けたアーティストは、Dibiase、Kaytranada、Donald Fagen『The Nightfly』、アントニオ・カルロス・ジョビンと幅広い。その音楽的視野の広さは、後の制作物に確かに刻まれている。2021年には「Show Me the Money 10」にプロデューサーとして参加し、担当楽曲「Merry-Go-Round」がGaonデジタルチャート1位を獲得。現在はZion.T主宰レーベル・Standard Friendsに所属する。
二人が出会ったとき何が起きたか
SUMINとSlomは、恒久的なデュオではない。それぞれのソロキャリアを持ちながら、コラボレーション作品「MINISERIESシリーズ」において唯一無二の化学反応を生んでいる。
SUMINが作詞を担い、Slomが作曲とプロデュースを受け持つ。この分業体制が、他では聴けないサウンドを生み出す源泉だ。英語圏の音楽批評サイトRandom J Popはこう評している——「Slomの音楽はSUMINに焦点を与え、ソングライター兼シンガーとしての彼女の強みをより際立たせている」と。
名盤『MINISERIES』——その中身
2021年9月にリリースされた『MINISERIES』は、全10曲・約30分というコンパクトな構成だ。しかしその密度は尋常ではない。
アルバムはJill Scottを想起させるネオソウル「신기루(Mirage)」で幕を開け、中盤ではUKガレージ風の「여기저기(Yogijogi)」、Janet Jacksonのスロウジャムを彷彿とさせる「ㅜ(Oo)」と、次々とジャンルの景色が変わる。そしてクライマックスの「한잔의 추억(Cheers)」では、あらゆるスタイルが一曲に凝縮される。
特筆すべき楽曲が「곤란한 노래(THE GONLAN SONG)」だ。G-Funk的なグルーヴと中毒性あるメロディで、Spotifyで約436万回再生を記録。この曲は第19回韓国大衆音楽賞(KMA)において最優秀R&B/Soul楽曲賞を受賞した。韓国音楽シーンでもっとも権威ある賞のひとつである。
韓国の批評サイトRhythmerは「韓国ブラックミュージックシーンの最前線にいるアーティストの現在地を存分に楽しめる作品」と評し、年間R&Bアルバムベスト5位に選出。IZMは「オルタナティブR&Bアルバムの新基準」と位置づけた。
進化した『MINISERIES 2』
2024年7月にリリースされた続編『MINISERIES 2』では、サウンドがさらに深化した。
ボサノバ的なグルーヴが新たな軸として加わり、アルバム全体の質感はより映画的・物語的になった。「보통의 이별(JUST A BREAKUP)」から「신호등(STOPLIGHT)」まで全9曲、恋の終わりを多角的な角度で描き出す。
なかでも「왜, 왜, 왜(WHY, WHY, WHY)」は約238万回再生を記録し、前作とは異なるアプローチでリスナーを引き込んだ。Random J Popは『MINISERIES 2』を第1作より高く評価しており、Hellokpopも2024年度最優秀R&B/Soulアルバムに選出している。
そして2025年、第22回韓国大衆音楽賞(KMA)で最優秀R&B/Soulアルバム賞を受賞。2作連続でKMAを席巻したことになる。これは偶然ではない。二人の音楽的充実が、確かな評価として結実した結果だ。
音楽性——なぜこれほど多彩なのか
SUMIN & Slomのサウンドを一言で表すのは難しい。それがある意味で、二人の最大の個性でもある。
Neo-Soul、Alternative R&B、渋谷系のポップさ、UKガレージ、2-Step、Bossa Nova、Lounge Pop、そしてDrum & Bass。これだけのジャンルが一枚のアルバムに共存しながら、不思議と散漫にならない。アルバムタイトル「MINISERIES」が示すとおり、前半が順調な恋愛、後半がその崩壊という「恋愛ドラマの1シーズン」構成が、全体に一本の軸を通しているからだ。
90年代末から2000年代初頭を生きたリスナーには、まるで記憶の中の音楽が蘇るような感覚があるだろう。それでいて、2020年代に聴くべき理由がある音楽だ。
日本との接点
2025年5月、SUMIN & Slomは東京・代官山CIRCUSでMINISERIESライブを開催した。日本市場へのアプローチが本格化しつつある。
さらに、待望のCDリイシューも実現している。当初はクラウドファンディングでのみ販売され、入手困難だった『MINISERIES』が、ボーナストラック「THE GONLAN SONG(日本語版)」を収録した形でリイシュー。CDにはブックレットと対訳が付属し、LPは初回生産限定帯付き仕様となっている。
日本語版のシングルリリースも行われており、この流れは止まらないだろう。
まず聴くなら、この一曲から
SUMIN & Slomをまだ聴いたことがないなら、「THE GONLAN SONG」から始めるといい。中毒性のあるグルーヴが、気づけばリピートを止められなくなっているはずだ。
次に「Mirage」でネオソウルの温もりに浸り、「Yogijogi」でUKガレージのビートを体で感じる。そうすれば、この二人がなぜ韓国音楽シーンで別格の存在とされているかが、自然とわかってくる。
二人の音楽には、ひとつのジャンルや文化圏を超えた普遍的な魅力がある。SUMIN & Slomは、新しい音楽の扉を開けたいすべての人に届けたい存在だ。


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