シンプルな願いのはずなのに、なぜこんなにも難しいのか。誰かに気づいてほしい——そのひと言に、この曲はすべてを込めた。
オーストラリア発のディスコ/ダンスデュオ、Midnight Pool Partyが新曲「NOTICE ME」をリリースした。これまで彼らが得意としてきた多幸感あふれるグルーヴはそのままに、今回はそこに鋭い感情のリアリティをプラス。ビートに乗って体が動く一方で、歌詞の言葉がじわりと胸に刺さってくる。
ディスコサウンドが包む、ひりつく片想い
Midnight Pool Partyといえば、踊ることへの純粋な喜びを体現したようなサウンドで知られる。軽快なビート、磨き上げられたシンセ、思わず口ずさみたくなるメロディライン——それは変わらない。だが「NOTICE ME」では、その心地よい音の層の下に、もどかしさと葛藤が静かに渦巻いていた。
“I get jealous / It’s hard when we are close”——冒頭の一節からして、すでに核心をついている。近くにいるからこそ苦しいという感情の機微を、バンドは丁寧に、しかし率直に言葉へと落とし込んだ。
サウンドと歌詞の間にある絶妙な「ねじれ」が、この曲をひときわ際立たせている。
「誰もが知っている感覚」を、曲にする
バンドは今作についてこう語っている。「愛は普遍的だが、気づいてもらえない経験も、そしてそれがいかに自分を傷つけているかを隠すことも、同じくらい普遍的だ」と。
誰かの名前が会話に出てくるたびにどきっとする。でも、そのことは悟られたくない。感情が溢れそうになっても、なんでもないふりで乗り切る。”I say it’s nothing / when you ask if I’m okay / I change the subject”——この歌詞はまるで、心の中の実況中継だ。
自分を守るために感情をコントロールしようとしながら、それでも「気づいてほしい」という叫びが抑えきれない。その押し引きこそが「NOTICE ME」の主題であり、聴く人の心に直接触れてくる理由でもある。
曲はこうして生まれた
制作の背景も興味深い。この曲は昨年末、クリスマス休暇に入る直前に書き始められたという。休暇明けに、バンドは時間をかけて歌詞と向き合い、ある特定の状況の中で経験する感情の道のりを正確に言葉で捉えようとしたそうだ。「メインのフックと中心テーマが固まってから、自然と曲が形になっていった」というその言葉からは、この楽曲が計算よりも感覚から生まれたことが伝わってくる。
楽曲はDarren MorillaとOliver Dela Cruzの共作、プロデュースはMidnight Pool Party自身が担当。マスタリングはJack Prestが手がけ、アートワークとビジュアルはMorella Mediaが制作した。隙のない布陣だ。
コーラスが体に残る理由
“What I gotta do, to get you to notice me?”
このフレーズが何度も繰り返される構成は、聴いているうちに頭から離れなくなる。しかしそれは単なる中毒性ではない。繰り返すことで感情の切実さが積み重なり、言葉の重みが変わっていく。最初は問いかけのように聴こえたものが、だんだんと懇願のように響き始める。
“Say that you want me / Say that you need me too / You think about me at all”——サビの言葉は、相手に向けられているようで、実は自分自身の願望の独白だ。誰かに「そう言ってほしい」と思いながら、それが現実ではないとわかっている。その認識のギャップに、痛みが宿る。
ラストに向かって”I show you love, but they don’t”というラインが繰り返されるとき、感情が一点に収束していく。ダンスミュージックでありながら、感情のドラマとしても完結している。そういう曲だ。
感情を隠すことを覚えた人たちへ
かつては感情をそのままぶつけられたのに、今はそう簡単にはいかない。経験を重ねるほどに「悟られたくない」という自制が育ち、気づけば本音を上手に隠すことを覚えてしまっている。
「NOTICE ME」が描くのは、まさにそういう人間の姿だ。相手に気づいてほしいと思いながら、それを表に出せない。感情をコントロールしようとすればするほど、内側で何かが積み重なっていく。その構造は、恋愛経験を持つ誰にとっても身に覚えのあるものだろう。
そしてこの曲は、その感情を責めない。ただ、「あなただけじゃない」とビートに乗せて届けてくれる。踊れる曲でありながら、聴けば聴くほど深みが増す。そういう音楽は、決して多くない。
まとめ
「NOTICE ME」は今すぐストリーミングで聴くことができる。
ストリームはこちら:https://bfan.link/notice-me
夜、ひとりで何かを抱えながら過ごすときや、誰かのことを考えながら眠れない夜に、このビートはあなたの感情に名前をつけてくれるかもしれない。
Midnight Pool Partyは、踊ることと感じることを同時に許してくれる、稀有な存在だ。


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