ロック、ソウル、カントリーを自在に横断する唯一無二のヴォーカリスト、グレイス・ポッター(Grace Potter)。4度のグラミー賞ノミネートを誇る彼女が、通算7作目となるスタジオアルバム『Trespasser(トレスパサー)』を、2026年8月21日にThirty Tigersよりリリースする。全10曲を収めた本作は、「禁じられた場所」へ躊躇なく踏み込んでいく、一癖も二癖もあるキャラクターたちの物語として構想されている。
アルバム概要
- アルバムタイトル:Trespasser
- アーティスト:Grace Potter
- リリース日:2026年8月21日
- レーベル:Thirty Tigers
- 収録曲数:全10曲
- プロデューサー:Eric Valentine(エリック・ヴァレンタイン/夫でもある頻繁な共同制作者。Queens of the Stone Age、Weezer、Slashなどを手がけてきた人物)
本作は、2023年に高く評価された前作『Mother Road』の「精神的な続編」と位置づけられている。ポッターは、カリフォルニア州トパンガキャニオンの自宅から、故郷であるバーモント州の第二の拠点へと向かうロードトリップ——過去5年間で8回、多くは単独で敢行してきたという——から着想を得た物語世界を、本作でも引き続き展開している。もっとも、感情的などん底からの救いを求めて生まれた『Mother Road』とは対照的に、『Trespasser』は自らのヴィジョンにしっかりと軸足を置いたアーティストの姿を映し出す一枚だと語られている。
制作背景——横断するアメリカで紡がれたサウンド
本作は、プロデューサーであり夫でもあるエリック・ヴァレンタインとともに、アメリカ大陸を横断するような形で制作された。
- トパンガ(自宅):Tom Petty & the Heartbreakersのベンモント・テンチが参加
- ナッシュビル:『Mother Road』のセッションにも参加したニック・ボックラス(Cage the Elephant)、ティム・ドー(Kings of Leon)、マット・マスティ(Train)らが参加
- バーモント:長年のライブバンドのメンバーであるインディア・ブラットン、リッキー・ドーヴァーJr.(ギター)、커티스・キーバー(ベース)、ジョーダン・ウェスト(ドラム)とともに完成
このように土地を移動しながら制作されたサウンドは、削ぎ落とされたソウルフルな曲調から、コズミック・カントリー、荒々しいロックンロールまでを横断し、常にポッターの圧倒的な歌声と豊かな物語性を軸に展開されている。
コンセプト——次元を越えるロード・サーガ
ポッターは『Trespasser』を「次元を飛び越えていくロード・サーガ」として構想したと語っている。長らく自身の中に渦巻いていた寓話や物語の断片を織り込んだ作品だという。
物語の中心にいるのは、「トピーカ」と呼ばれる自由奔放な放浪者だ。疾走感あふれる「Ride Or Die」では橋から飛び降りるように姿を消し、幻想的な「Gasoline」の中で蘇る。さらに「War On The Mountain」では、カフェの配達員だった好色な幽霊と、嫉妬に狂って彼を手にかけたダイナーの経営者という異色のコンビも登場し、神話的なドラマへと発展する。追放されてきた自分自身のあらゆる側面と和解することで得られる「全体性」というテーマが、この楽曲群を貫いている。
「私たちは常に、境界を侵す者(トレスパサー)は悪者だと教えられてきた」とポッターは語る。彼女にとってそれは無謀な反抗ではなく、身体的にも精神的にも感情的にも、これまで受け入れてきた物語の外側へ踏み出していく行為であり、踏み込むことを禁じられた場所こそが、本当の自分を教えてくれるのだという。
収録曲紹介
1. 「Love Me Not」(2026年5月15日リリース)
アルバムからの第1弾シングル。傷ついたような繊細さで幕を開けたかと思うと、最初のサビ以降は一気に高揚感のあるカオスへと変貌する。煌びやかなピアノのメロディと、賑やかなグループコーラスが感情の残骸の中を軽やかに踊るような楽曲。米番組『Live with Kelly & Mark』でも披露された。
2. 「Run Baby Run」(2026年6月12日リリース)
疾走感のあるリフと高揚感あるリズムが特徴の、”自己防衛”をテーマにしたアンセム。ポッター自身、深刻な会話をしなければならない場面で「逃げ出したい」という衝動に駆られた経験から生まれた楽曲で、当初は「なぜ物事が重くなると、いつも逃げたくなるのか」という自問から出発し、最終的には虐待的な関係から逃れる女性を描くラブソングへと展開したという。
3. 「Belong」(2026年7月17日リリース)
アルバムを締めくくる楽曲で、第3弾シングルとして先行公開された。優しく光るウーリッツァーの調べ、物憂げなペダルスティール、荘厳なゴスペル・ハーモニーを纏った本作は、解決ではなく静かな気づきを重視した実存的なロードソングとして描かれている。ポッターはこの曲について、いつか「所属する(belong)」場所にたどり着けると思って書いた曲だが、実際にはいまだ旅の途中にあるのだと明かしている。
収録曲リスト『Trespasser』
- Main Street U.S.A.
- Ride Or Die
- Love Me Not
- Gasoline
- Run Baby Run
- Lost Cafe
- Trespasser
- The Voice
- War On The Mountain
- Belong
アナログ盤の展開
『Trespasser』はアナログレコードでも複数のカラーバリエーションで予約受付中だ。
- Cell Block Black:スタンダードな黒盤
- Hot Pursuit Orange:Grace Potter公式ウェブストア限定
- Stock Tank Blue:インディーレコード店限定
- Double Detour Red:Talk Shop Live限定
ツアー情報
ポッターは今夏、クリス・ステープルトンの「All American Road Show Tour」に3年連続でサポートアクトとして参加。さらに秋にはザック・ブラウン・バンドの「Love and Fear Tour」にも11公演にわたって出演する。ニューヨークのフォレスト・ヒルズ・スタジアムでの2公演を皮切りに、サウスカロライナ州グリーンビルのボン・スクールズ・ウェルネス・アリーナ、イリノイ州ロズモントのオールステート・アリーナ、コロラド州モリソンの名門レッド・ロックス・アンフィシアター(2公演)などを回る予定だ。
また、毎年恒例の音楽フェスティバル「Grand Point North」が、2026年9月18日から20日にかけて、ポッターの故郷であるバーモント州バーリントンのウォーターフロント・パークで開催される。ポッター本人に加え、Portugal. The Man、Dawes、Dark Star Orchestra、Trampled By Turtles、The Devil Makes Three、Maggie Roseら豪華な顔ぶれが出演し、収益はバーモント州の芸術支援を目的とした非営利団体「Grand Point Foundation」に寄付される。
まとめ
『Trespasser』は、2023年の『Mother Road』で描かれた”感情的などん底からの救い”を経て、ようやく自分自身の物語を確かなヴィジョンとともに語れるようになったグレイス・ポッターの現在地を示す作品だ。夫であるエリック・ヴァレンタインとともにアメリカ大陸を横断しながら紡がれたサウンドと、次元を越境するロード・サーガというコンセプトが融合した本作は、2026年8月21日のリリースが待ち遠しい一枚となっている。ツアーやGrand Point Northフェスティバルとあわせて、今後の彼女の動向にも注目したい。

