D’Angelo(ディアンジェロ)51歳で死去。ネオソウルを切り拓いた天才の軌跡

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デビュー作『Brown Sugar』でネオソウル時代を開く

D’Angelo(ディアンジェロ)が2025年10月14日にがんのため死去しました。享年51歳でした。家族は声明で「勇敢な闘病の末、光を絶やしたが、彼が残した音楽の遺産に永遠に感謝している」と述べています。

本名マイケル・ユージーン・アーチャーとしてヴァージニア州リッチモンドに生まれたD’Angeloは、3歳からピアノを学び、教会で父とともに演奏を重ねました。1993年にEMIレコードと契約し、1995年にデビューアルバム『Brown Sugar』をリリース。この作品はクラシックR&Bの温もりとヒップホップのグルーヴを融合させ、ミッド90年代の“ネオソウル”ムーブメントの幕を開けました。

『Brown Sugar』は全米ビルボード200で65週にわたりチャートイン。代表曲「Lady」「Cruisin’」「Brown Sugar」がヒットし、D’Angeloは瞬く間に時代の寵児となりました。彼のサウンドはマックスウェルやエリカ・バドゥなど、多くのアーティストに影響を与えています。


『Voodoo』『Black Messiah』へ――深化するサウンドと孤高の表現者としての歩み

D’AngeloはドラマーのQuestlove(クエストラヴ)と出会い、運命的な音楽的絆を築きます。両者は後に“Soulquarians”と呼ばれる集団を形成し、R&B、ジャズ、ヒップホップを越境する革新的な作品群を生み出しました。

2000年に発表された2ndアルバム『Voodoo』は、ニューヨークのElectric Lady Studiosで長期間にわたり制作されました。J Dilla、Roy Hargrove、Pino Palladinoら豪華メンバーが参加し、スライ&ザ・ファミリー・ストーンやプリンスの影響を感じさせる実験的なリズム構築で高い評価を得ました。

特に「Untitled (How Does It Feel)」は、D’Angeloの繊細かつ官能的な歌声が際立つ代表曲となり、グラミー賞を受賞。一方でミュージックビデオの過激な注目が本人を苦しめ、長い沈黙のきっかけにもなりました。

沈黙を破ったのは2014年。実に15年ぶりの3rdアルバム『Black Messiah』をリリースし、社会的メッセージと深化したグルーヴで再び世界を魅了しました。リリース直後のアポロ・シアター公演では、その圧倒的なステージングが絶賛されました。

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Erykah BaduやLauryn Hillとの共演、そしてPrinceへの敬意

D’Angeloの音楽人生には、数々の名アーティストとの出会いが刻まれています。
1996年にはエリカ・バドゥとのデュエット「Your Precious Love」を発表。1998年にはローリン・ヒルの名盤『The Miseducation of Lauryn Hill』に参加し、デュエット曲「Nothing Even Matters」で心揺さぶるハーモニーを響かせました。

また、彼は生涯にわたりプリンスへの敬意を表し続けました。1997年には「She’s Always in My Hair」のカバーを披露し、2013年のカーネギーホールでのプリンストリビュートでは圧巻のパフォーマンスを見せています。プリンス亡き後の『The Tonight Show』では「Sometimes It Snows in April」を献唱し、深い悲しみを共有しました。

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ファンと仲間に愛された音楽の魂

D’Angeloは生涯でわずか3枚のスタジオアルバムしか残しませんでしたが、その音楽的影響力は計り知れません。「Brown Sugar」「Voodoo」「Black Messiah」――それぞれが時代の精神を映し出す名盤として語り継がれています。

ローリン・ヒルは彼の訃報に「あなたの美しさと才能はこの世のものではなかった」と追悼の言葉を寄せ、クエストラヴも「彼が語った“黒人の天才”という重圧は、彼自身の物語でもあった」と振り返りました。

2019年にはゲーム『Red Dead Redemption 2』のサウンドトラックに「Unshaken」を提供。晩年までその魂は静かに燃え続けていました。
D’Angeloが築いた音楽は、世代を超えて多くの人々の心に生き続けています。

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