POLI NIKA(ポリ・ニカ)最新EP『Remember Why』|生楽器が紡ぐ心に還る音楽

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Photo Credit: Sveta Spekos

ポルトガル・リスボンを拠点に活動するシンガーソングライター、POLI NIKA。ジャズとソウルの薫りをまとったインディーポップで、リスナーの心に静かに、しかし確実に届く音楽を作り続ける彼女が、最新EP『Remember Why』を2025年10月にリリースした。

全5曲・約16分24秒、すべて生楽器で演奏されたこの作品は、単なる新作にとどまらない。彼女自身の言葉を借りれば、制作に1年半以上を費やした、「これまで登ったことのない山頂」への到達だ。

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ジャズ、ソウル、そしてインディーポップの交差点

POLI NIKAの音楽を一言で説明するのは難しい。ジャズの即興性、ソウルの体温、インディーポップの親密さ——これらが自然に溶け合い、ひとつの世界を作り上げている。英国音楽メディア「Concert Crap」はその音楽を「まるで力強い映画のサウンドトラックのようだ。親密で、生々しく、感情のニュアンスに満ちている」と評した。

彼女の歌声には、独特の二面性がある。「エレガントなボーカルには力強さがある一方で、生の感情と脆さがそれぞれのコードからにじみ出ている」と「The Other Side Reviews」は記している。繊細でありながら、どこか揺るがない。その対比こそが、POLI NIKAの音楽をひとたび聴いたら忘れられないものにしている理由だろう。

影響源として名前が挙がるのは、ジョーダン・ラカイ、リジー・マカルパイン、エミリー・キング、リアン・ラ・ハヴァスといった面々だ。これらのアーティストを好む人には、迷わず聴いてほしい。


EP『Remember Why』——全5曲を聴く

プロデューサーのTheodore Lionのもと、Richard Raymond II、Scott Fansher、Luke Anthønyをはじめとする複数のミュージシャンによって演奏された本作。トランペット、フルート、ドラム、ギター——すべての音に人間の息遣いが宿っている。POLI NIKAはこう語る。「このアルバムには人間の温もりが大切だと感じました。ブラスの息遣い、弦に触れる指、全ての音に魂を感じてもらいたかったのです」

1. Sunny Days(2:43)

オープニングを飾るのは、アコースティックギターとブラスが心地よく絡み合うジャズポップ。エミネムやセリーヌ・ディオンとの共演経験を持つソングライター、Liz Rodriguesとの共作で、長い停滞の時期を経てアーティストとしての情熱を取り戻した瞬間を歌っている。

「そのとき全てが変わったんです。色が戻ってきたんです」——POLI NIKA自身の言葉通り、曲全体に前を向く推進力がある。テンポは落ち着いているが、ボーカルと生楽器のアンサンブルが重なるにつれて、じわじわと高揚感が増していく。EP全体の入口として、聴き手の気持ちを自然に引き込む一曲だ。

2. Summer’s Falling(3:09)

Liz Rodriguesとの共作がもう一曲。前曲と打って変わって、弾けるようなリズムとメロディが印象的なポップトラックだ。夏の恋愛をテーマに、浮き足立つような感情をストレートに描いている。ボーカルのノリが軽快で、コーラスの引きが強い。聴き終えた後にもメロディが頭に残るタイプの曲で、EPの中でも最もラジオフレンドリーな仕上がりといえる。タイトル曲「Remember Why」の内省的な世界観への橋渡しとして、絶妙な位置に置かれた一曲でもある。

3. Remember Why(3:17)

EPのタイトル曲。ホーンセクションとピアノが主軸を担う、生楽器の存在感が際立つ一曲だ。テンポはミディアムで、落ち着いた雰囲気の中にブラスの厚みが加わることで、曲全体に芯の強さが生まれている。歌詞は「なぜ始めたのか」という問いを軸に、目的や情熱を見つめ直すテーマを扱っている。POLI NIKAのボーカルは抑制が効いていながらも、サビに向かうにつれて感情の解放感が増す。説教的な押しつけがなく、あくまで聴き手自身に委ねるような語り口が、この曲の核心だ。

4. Don’t Go so Fast(3:19)

アルペジオのギターフレーズが曲全体を静かに支える、内省的なバラードだ。過ぎ去っていく時間や、大切な瞬間が気づかぬうちに手からこぼれ落ちていく感覚を歌っている。「Under The Radar」が「催眠的なアルペジオギターライン」と評したように、繰り返されるギターのパターンが心地よいグルーヴを作り出す。ボーカルのダイナミクスは小さく抑えられており、耳を近づけて聴きたくなる親密さがある。4曲目という位置で、EPの流れをいったん落ち着かせる役割も果たしている。

5. Freedom(3:53)

全5曲の中で最も尺が長く、EP全体の締めくくりを担うクロージングトラック。ストリングスとブラスが徐々に重なっていく構成で、曲が進むにつれてアレンジの厚みが増していく。「閉じ込められていたことからの自由」をテーマに掲げており、歌詞の内容も他の収録曲と比べてより直接的だ。ボーカルも感情の振り幅が大きく、POLI NIKAの表現力が最もよく出た一曲といえる。EP全体を通じた旅路の終着点として、聴き終えた後に深い余韻を残す。

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光は、暗闇を知ることから生まれる

EPのテーマを象徴するPOLI NIKAの言葉がある。「このEPの明るい曲はすべて、その反対を最初に知ることから生まれています。失恋からの愛。何年も暗闇に感じていた日々からの晴れた日。光は、暗闇が何をもたらすかを知ることから生まれます」

その言葉通り、この作品には過去の傷や迷いが透けて見える。だからこそ、その明るさが本物として響く。


ロシアからリスボンへ——音楽を通じて築いた居場所

2022年、POLI NIKAはロシアからポルトガルへと移住した。知り合いが誰もいない街で、それでも音楽を続けると決めた。リスボンのスタジオに通い詰め、ライブシーンに飛び込み、地元の音楽コミュニティで着実に存在感を高めていった。

スタジオのオーナーが、会ってわずか一週間のPOLI NIKAにスタジオ全体の鍵を手渡したというエピソードがある。「この街では全くの異邦人でしたし、定住する家の鍵さえ持っていなかったのに」と彼女は振り返る。見知らぬ土地での、見知らぬ人からの信頼。その経験が、彼女の音楽に宿る温かさと無縁ではないだろう。


メディアも注目、「Notion」初掲載

音楽メディア「Notion」はEPリリースに際し、POLI NIKAをフィーチャーした。「全曲生楽器で演奏された5つのトラックは、聴く人の心を高揚させる深みを持っている」とその評価は高い。「Under The Radar」や「Illustrate Magazine」なども彼女の音楽を取り上げており、国際的な注目が集まりつつある。

「一言一言が誠実さと響きに満ち、愛と繋がりを求めて切望している」——Illustrate Magazineのその言葉が、POLI NIKAの音楽の本質を突いている。

Remember Why by POLI NIKA
Portugal-based indie-pop artist POLI NIKA embraces the journey of healing with her latest EP Remember Why.

あなた自身の一曲が、きっとある

『Remember Why』は今すぐ聴ける。Spotifyなどのストリーミングプラットフォームはもちろん、YouTubeではライブバージョンも公開されている。スタジオ録音とは異なる表情を持つ、生のパフォーマンスもぜひ体験してほしい。

自分を見失いそうな夜に。あるいは、忘れていた何かを思い出したい朝に。『Remember Why』は、あなたにそっと寄り添う音楽だ。

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