ストリーミング時代の逆行志向 ~なぜ私は2025年にCDとDVDに回帰するのか~

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※この記事は、タイムズ紙に掲載されたショーン・ラッセル氏のコラムを翻訳・編集したものです。

出典:https://www.thetimes.com/culture/music/article/streaming-spotify-netflix-ruined-music-film-5q2hhlkmg

はじめに:2024年のSpotify Wrapped(年間利用統計)が教えてくれたこと

「あなたの2024年のSpotify Wrappedはどんな結果でしたか?新しい音楽との出会いの年でしたか?それとも、いつもと変わらない一年でしたか?」

私の場合、驚くべき結果が出ました。最も聴いた曲は80年代イタリアの歌手ミルヴァの「アレクサンダープラッツ」で、なんと39回も再生。トップアーティストはレナード・コーエンとボブ・ディラン。いいえ、私は70代の音楽ファンではありません。31歳です。

ストリーミングサービスがもたらした「聴き方」の変化

パンデミック期の気づき

2020年、パンデミックの最中に私はある問題に気付きました。シェアハウスの自室で、ほぼ24時間音楽を流し続けていた時期があります。そして数週間後、突然すべての音が「ノイズ」としか感じられなくなりました。

音楽を「聴く」ことをやめ、ただ「流す」ことに終始していたのです。生まれて初めて、音楽に対して無関心になりました。アートだったはずの音楽が、ただの「コンテンツ」と化していたのです。

アルゴリズムによる選択の制限

Spotifyの便利さの裏で、実は大きな代償を払っていました。私たちの選択の自由は、アルゴリズムによって密かに制限されています。

  • Release Radar
  • Discover Weekly
  • デイリーミックス
  • Smart Shuffle機能
  • Discover Mode

これらの機能は、一見私たちの音楽体験を豊かにしているように見えます。しかし実際には、アルゴリズムが選んだ「似たような」音楽の泡の中に私たちを閉じ込めているのです。

興味深い統計があります。Spotifyでは、わずか1%のアーティストが全ストリーミング再生の90%を占めているそうです。この数字は、プラットフォームが実際にはコンテンツの多様性を制限している可能性を示唆しています。

2025年、私は「古き良き時代」に回帰する

新しい音楽との付き合い方

  1. アルバム単位での視聴を基本とし、シャッフル再生は避ける
  2. 外出時は6枚のアルバムに限定(父の車のCDチェンジャーと同じ枚数)
  3. 気に入ったアルバムは物理メディア(CDまたはレコード)を購入
  4. ラジオや音楽雑誌を通じた新譜情報のチェック

なぜ物理メディアなのか

アーティストへの支援という側面もあります。Spotifyの支払いは1ストリームあたりわずか0.3~0.5円程度(0.003-0.005ドル)。CD購入は、好きなアーティストを直接支援する最も確実な方法の一つと言えます。

映画視聴にも同じ問題が

ストリーミング時代の「選べない病」

「食事中に何か見るものを探して」
「何がいい?」
「気軽なものでいいよ」
(食事が冷めていく中、延々とスクロール)
「もういいから、何でもいいから選んで」

こんな会話、どこかで経験したことはありませんか?

DVDの復権

私は最近、MusicMagpieという中古メディアのリセールサイトで、4枚で約1,500円(8ポンド)のDVDを購入しています。『卒業』『ビフォア・サンライズ』『スリー・ビルボード』など、選り抜きの作品を意識的に選んで観賞。ストリーミングでは味わえない、豊かな色彩と奥行きのある映像を楽しんでいます。

まとめ:アルゴリズムに支配されない文化体験を目指して

2025年、私は意識的に「選ぶ」という行為を大切にしていきます。アルゴリズムから自由になり、人間らしい好奇心を持って音楽や映画と向き合いたいと考えています。

そして何より大切なのは、「沈黙を恐れない」こと。音楽を聴きたくないときは聴かず、映画を観たくないときは観ない。アートは私たちの人生を豊かにするものであって、沈黙から逃れるための便利な道具であってはならないのです。

この記事は情報提供を目的としており、特定のサービスや製品を推奨するものではありません。